ガルパンさん徘徊記(1)
2016年3月15日。大洗に、久々にいってきた。
現地では2013年中に行ったもんだと思いこんでたけど、記録を確認すると2014年8月末だった。でもまあ一年七ヶ月ぶりなので、「2年ぶりに来た」と現地で言ってたのはおよそ正しかった。なんか我ながらめちゃくちゃ。
前回来た時は、たまたま大納涼祭をやっていた日だったもので、商店街がお祭りモード、露店がそこら中に出て賑やかだったが、今回は単なる平日。
また前回は単独行だったけど、今回は朋友(ポンヨウ)の伊勢さんとふたり。前回は日帰りだったけど、今回は一泊二日。
前回の記事を見返すと、滞在時間短めだった上に何かと下調べの足りない私のことだから、ガルパン華やかなる商店街あたりをわりとあっさり流してしまっているようだ。今回は、ちゃんと調べるタイプの伊勢さんがあれこれ押さえていたし、時間も余裕たっぷり。行ったところも食べたものも、前回よりかなり充実した。
では、写真日記スタイルで。
前回はガルパン列車が水戸にまで走っていたものだけど、今回はさすがにラッピングは終了していた。
10時前に大洗入りして、今回の宿泊先である大洗ホテルさんの送迎車がきてくれたので、そのまま大洗ホテルへ移動。
大洗ホテルからレンタサイクルで、まずは目の前の大洗磯前神社へ。
前回来た時は、屋根の張替え中で拝殿が見られなかったのだが、ついにその姿を表していた。新しい屋根が美しい。
前回来た時にはちょうど置かれたばっかりだった大絵馬。一年半経ってもきれいなままだ。
那珂忠魂碑にも再び手を合わせて。
うちの那珂ちゃんはLv.134になりました。
境内の海洋博物館は、素朴スポットで結構いいんだけどあいにく定休日。前回「大物展示物の劣化がひどいから500円を300円に値引き中」だったのが、今回は正価300円になっていた。その大物、くじらのペニスの標本だったんだけど、そうか、あれやっぱりダメになってたか……。
で、ここから県道2号線を登坂し、祝町いささかりんりん通りへと、少々ガルパン観光としてはイレギュラーなルートを辿ってしまったが、結果的には坂本文具店さんへさしかかった。
前回は少なくとも私が大洗の方に「ガルパンさん」と呼ばれた覚えはないけど、今回は坂本文具店さんからさっそく呼ばれ、その後も何度も。「ガルパンファンの人がガルパン目当てで来たんですか?」というのが「ガルパンさん?」の一言になっているようだ。
遠い未来、「地震と津波にやられた大洗の町に、戦車とともにやってきて町を救った福の神『がるぱんさん』」みたいな伝承になってるんじゃなかろうか。福の神だと思ったら荒神だった、という伝承にならんように振る舞いたいものだ。
老舗書店、江口又新堂さん。
ポップはお店にひとりかと思ってたら、ここには左衛門佐とおりょうがいる。おりょうはもともと玉屋菓子店さんにいたらしいが、お店が休みになっちゃってこちらに来たそう。
中はガルパン関連書籍がアニメショップすら凌駕する品揃えと在庫。
さらには、18480年創業(実際もっと古いとも)の老舗だけあって、古い商品看板やポスターのコレクションが奥の方に。それに紛れて、昔の少年チャンピオンの宣材が残っていて、がきデカやら手塚先生やらの古いイラストポップが。結構な値打ちもんやで。
お店の奥さんが歴女で、大洗の「幕末と明治の博物館」にまつわるちょっとすごい話を教えてくれたり、田中光顕筆の扇子を見せてくれたり。幕末と明治の博物館は歴史ファンなら面白いところなので、お話を聞いてから向かうといいかも。
それから、レジ近くに那珂ちゃんコーナーもあって、すき家の艦これコラボキャンペーンの那珂ちゃんカードが早くも飾られていた。お店のお兄さんが早くもゲットしてきたそう。
江口又新堂と坂本文具店の隣に、スルガヤ薬局さんがあったのだけど、取り壊し・移転になった。ゴモヨと一緒に近くに移転して、仮店舗で営業中。
後で喫茶ブロンズの待ち時間、花粉症の薬が切れてピンチに陥ったので、急遽買いに行ったのがスルガヤ薬局さんの新店舗だった。「引っ越しでいっぱい出てきて持て余してるから」といいつつ、多量のポケットティッシュ・ウェットティッシュを分けてくれた。心遣いがありがたい。
そして名高い肴屋本店さんとダー様。ちなみにポップは高解像度・新イラストの二代目ができていて、大抵のお店ではふたつとも出している。
ここで、100円玉2個を縦に挿してレバーを押し込むと出てくるカードベンダーをひとつやってみて。右上の華さんとこから引いて、出てきたのは沙織であった。
それから、ヴィンテージクラブむらいさんに立ち寄って、オレンジペコ一杯350円。マスターと地元のおじさんと歓談しつつ一休み。やっぱりガルパンさんと呼ばれる。昼間っから酒飲んでるガルパンさんの一団あり。まあ私らもオレンジペコがなければ一杯やってた可能性が高いが。
不勉強で知らなかったが、SHIROBAKOにも出てきてるそうで、中にもむしろガルパンより目立つSHIROBAKOコーナーが。
それからちょっとうろうろして、1時前に、かの名高い鉄板ナポリタンを出す喫茶ブロンズへ。
ペパロニがいる。ちょっとだけ商店街と外れてたりして、多分私が前回来た時は気付かなかったお店。
そして来たりぬ鉄板ナポリタン。デ……デケェッ! 多分パスタを、乾麺で200gかそれ以上くらい盛ってるところに、たっぷりした卵焼きとソーセージ。器まで似せてるところがニクい。
行列が絶えない状態で、注文を受けてから律儀に作り始める感じで、回転はかなり遅い。待って食べて出るまで2時間近くかかってしまったので、日帰りのタイトな日程だと厳しいと思うが、確かに鉄板ナポリタンはここで食べるべきというのもわかる。ちゃんと作ってる料理の味。まったく美味い。
この混みようだとお店の方も大変だと思うけれど、ジョークを交えた愛想いい接客で客を沸かせていた。
ところで鉄板ナポリタンはもともと名古屋の食文化で、それを愛知県出身のドゥーチェがアンツィオに持ち込んだとのことだが、名古屋式は卵が下らしい。卵が上だと、神戸のオムソバみたいな雰囲気になるな。
それから、私は前回寄らなかったリゾートアウトレット。
あのエスカレーター。
好天。
でもって、ここにはガルパンギャラリーがある。
何しろ街の皆さんがやってくれることがここまで充実しちゃってる大洗で、オフィシャルなギャラリーを作って何をやれるのかなあ、と思えば、当初はむしろ町を巻き込まないつもりだったというような裏話から、これまでの出来事の年表、無数のグッズのコレクションなどなど、充実の内容。
4話で歴女チームが旗置いて伏兵していた金子屋薬局さん、取り壊しになってしまって、その調剤室を移設保存してある。ここまでやるなら、いつかこのブームが終わってしまった後にも、こんなことが起こっていたことを残す施設として長く続けるのかもしれないなあ。
ガルパンギャラリーを出ると、そのまま大洗と友好都市の物産を販売する、まいわい市場別館へ繋がる。そこには、ジオラマが5作品、いずれも高いクオリティで展示中だった。私もモデラーの端くれだけど、このクオリティは出せないなあ。
ふと見れば、戦車クレープなどを出しているキラキラクレープの屋台があった。
この裏。
前に来た時に比べると、いろいろ洗練されたものが増えていたように感じていたんだけど、この手作り感を見ると「あっ、前はこんなだった」っていう気がする。別にどっちが優れてるってことじゃないけど、洗練に飲み込まれてこういうのどかなやつが消えてしまったりしないのが、商売っ気とかいやらしさが出ない理由かもしれないな。
アウトレットには、震災復興記念ギャラリーもある。
立ち寄ったお店の方からも何度か話は聞いたけれど、あの日には大洗にも津波が来て、海岸沿いのリゾートアウトレットなどは随分被害も受けていたそう。商店街あたりは少しだけ高くなっていて、津波までは避けられたとも聞いたけれど、ちょっとした地形の差で被害が変わって、それから交通網やら産業の差で大洗みたいになったところもあれば、未だに復興できないところもあって……
そういえば、大洗磯前神社のあの階段の下にいる狛犬、えらくボロボロになってて。あれは津波がかぶったせいだったのかな。
それから、まいわい市場で干し芋や青さ粉など買い込んだ。名高い餡香焼やきは、締切時間直前で、評判の芋餡も売り切れだった。
そろそろホテル戻るかー、と移動していると、通りかかった交番にまで継続のミッコが居た……。ついに官憲まで抱き込んだか。
で、夕方5時になって、宿泊先の大洗ホテルに帰還。
大洗ホテル担当は冷泉殿。
さて、旅行といったらいつも素泊まり4000円のビジネスホテル使う私なのだが、今回はふるさと納税などを活用したリーズナブルなプランでもって、大洗ホテルのような高級ホテルを利用しているわけである。
あんこう吊し切りショーなんてのをやってる。すげえ。
夕食も、素晴らしきクオリティのあんこう料理と、茨城産品を活かした料理が並ぶビュッフェ。あんこうって食べたことなかったのだが、この海のもの苦手な上、初めて食べるものにめっちゃ警戒する偏食家の私をしても、全く美味かった。
部屋もまた、高層階から海を臨む絶景。ホテルの設備も、造りの古さはあるものの、しっかりコストを掛けて最高の状態を維持しつづけているような良さ。さすが。
大浴場でゆったりしたり、部屋で茨城ローカルの局とかないかなと思ったらなかったのでNHK水戸放送局を見つつ、伊勢さんと大洗のこの奇跡について語らっていた。
こんな事態を別のところで狙ってまた起こせるのかというと、まず難しかろうとは思うのだけど、それでもやっぱりなぜ大洗だとここまで行けてしまったのか、考えたくなるものだ。
もともと観光地であって、こういう上質なホテルから民宿まで、様々な宿泊が以前から多数存在する、というのは強い。食事する場所にも困らず、出てくるものも良い。そういうのが、観光客を受け入れるキャパになってる感じはある。
以前、P.A.Worksの「true tears」の時、富山の城端に観光に行ったことがあるんだけど、あそこは工芸・民芸が素晴らしくて見どころは濃密なんだけど、泊まるところ弱かったし、結構食べるところも少ない感じでちょっと困った。もしアニメツーリズムがあれ以上に流行ってしまったら、キャパオーバーに苦しんだ気がする。
交通の便は、どれくらいが適当だろう。
大洗も遠いっちゃ遠いけど、東京から3時間くらいで来れるから日帰り可能だし、すぐ近くの水戸だって北関東の大都市だから、そこまで不便ではない。あまり近すぎても旅した感じが足りないし、いいところなのかも。
あと、ちょっと大洗の土地の使い方に気になるところがあって、大洗磯前神社からアクアワールド大洗水族館にかけて、海岸沿いは海水浴場だけど、道を挟んだ丘がごっそりゴルフ場になってる。これ、いわゆる観光地だと、丘まで含めて海浜公園にしたりしそうな気がする。
もしかすると案外、自然公園で守りに入るよりゴルフ場やアウトレットモールで攻める、みたいな気風の土地なのかもしれん。若い人が来て楽しんでくれるならアニメにも乗ってみよう、と、町ぐるみで動けることにも繋がるのかな。
現にうまくいっているから、うまくいっている理由はいくらでも、いろいろなところから見いだせるのだろうけど、すべてを見いだせるか、見いだせたところで他所に持っていけるか、持っていけたとして盛り上がりが再現するか、まあ、できるわけないんだけど。
こんなことを考えてしまうというのもやっぱ、目の前で起きてることがよっぽどのことだと思わずにいられんからでね。ほんとに、一生に一度しか起きそうにないことが起きてるのは間違いない。
二日目に続く。