BungBungame Photon 2レビューなど
投稿者: 無謀庵 / 2016年9月17日 - 07:06 / カテゴリー: PC
ずっとモバイルに使っていたLavie Zも先日、さすがに限界がきてたので手放した。
何か気軽にひょいっと持ち出せるようなモバイル機がほしいかな、と思ってたところに、Photon 2のセール情報が飛んできた。
まあ、セールといっても元々29800円で通販していたのが、シリコンハウス東映の店頭で28800円で販売するだけらしいんだけど、不勉強にして私はこの製品の存在自体を知らず。
Windowsタブレットといえば、猫も杓子もBayTrailやCherryTrailばっかり使ってるところ、まさかのAMD Mullins。メモリーも4GB積んでいて、スタイラスペンまで対応かつ付属。面白い。
付属品等
開封レビューは他にやってる人が大勢いるので、現物の写真とかは省略。
本体、ACアダプター、USBケーブル(標準A→Micro Aへの変換アダプターつき)、スタイラスペンと単6電池、それから標準A/Micro A両用の8GB USBメモリーがついていた。
本体側の端子は、Micro HDMI、USB 2.0 (Microコネクタ)、SDカード、Micro SDカード、イヤホン、電源。SDのデュアルスロットは珍しい。
モニターは、フルHDじゃなくて16:10の、1920 × 1200。10点タッチで、筆圧感知できるスタイラスペンが付属。
今回はキーボードカバーもセット。
CPU: AMD A6 Micro-6500T
AMDのFusion APUはまあ、コストパフォーマンスのいいCPUとしてそれなりのポジションは得ていると思うのだけど、このA6 Micro-6500T (1.2GHz / Max 1.8GHz / 4C4T)は少々珍しい。
コードネームはMullinsという耳慣れないものだが、ASCII.jpの記事から見ると、Kabiniの後継にあたるモバイル向けCPUであるらしい。
世に出回るレビュー記事などを見る限り、例によってというか、ライバルのIntel Atom (世代的にはBayTrail)に対して、CPU性能で同等かちょい落ちるか、グラフィック性能では大きく上回る、といういつものやつ。
まあ、元々タブレットにそこまで処理性能に期待しないのはあるけれど、使ってみた感じ、CPUの処理能力不足が酷いと感じるシーンは特にない。
Windows 10がAnniversary UpdateでWindows Inkなどのペン対応機能が増強されたが、意外にペンの反応がよく、曲線をさっと描いても如実に多角形になったりしない。CPUパワーが足を引っ張ったりはしていないようだ。
以前BayTrail-TのAtom Z3735G (1.33GHz / Max 1.86GHz / 4C4T)のタブレットを使っていたこともあったが、やはり体感レベルでは同等かそれ以上かというところ。
発熱について
ただ、A6 Micro-6500Tは、TDPが4.5Wある。Atom Z3735Gは2.2Wだから半分。
実際、Photon 2でdistributed.netクライアントを走らせ、CPUフルロード状態にしてみると、本体裏面右寄りあたりがかなり高温になる。Atom Z3735Gだと、同じことをしてももっと加熱が控えめに思えた。
もちろん、普通に使っていると大した発熱はしないので、実用の問題はない。
ただ、AtomではなくFusion APUを選ぶメリットは3Dゲームなどに強いことのはずで、でもゲームを遊ぶと発熱が心配となると、いささか相反してしまう感はある。
他のMullins採用PCというと、HPのPavilion 10z netbook (E1 Micro-6200T)やStream 14 (A4 Micro-6400T)があるが、これらはファンレスではあるらしいものの、タブレットよりは筐体に余裕があるはずのクラムシェルノート。なのに、タブレットのPhoton 2よりロークラスのもの。
Photon 2の場合は、BungBungameという小メーカーゆえの攻めた設計で、より高性能なA6 Micro-6500Tをタブレットに載せているけれど、HPのような大手だとクラムシェルになっちゃうモノなのかもしれない。
外装排熱とSTAMP
ところで、Mullinsの特徴として、STAMPという機能がある(ASCII.jpの記事参照)。温度監視を、CPUコアだけでなくタブレットの筐体に対しても行い、手で触って熱すぎる温度になっているならクロックを下げるなどして発熱を減らす、というもの。
そういう機能があるのだし、筐体を積極的に排熱に利用する設計になっているのかもしれない。実際、裏面はおそらく金属製なので、これをヒートシンク的に使えばそこそこ排熱性能を取れそう。
外気温の影響も大きい感じ。エアコンをきかせているとか、25度くらいまで気温が下がっている日なら、数時間負荷をかけ続けても、CPU温度は50~55度くらいまでしか上がらない。それで外装に触れても、熱くはあるが触れないほどでもない。
まあ、HWMonitorにはSTAMPのセンサーらしいものは見当たらなかった(検出できないだけの可能性はある)し、本当にSTAMPを利用して外装で排熱しているかどうかは、ちょっと判断しかねるけれども。
また、仮に外装排熱を行っているとしたら、外気温が高いところで使って、排熱できないほど加熱してしまう状態にはしないほうがよさそう。まずハードウェアの寿命が縮まる。夏の屋外使用は気をつけておく。
distributed.netとクロック制御
うちではベンチマークといったらdistributed.netのOGR-NGだが、これはMullinsはかなり性能がいい。
私がこれまで集めたベンチマークに基づくと、Atom Z3735Gの2倍くらいの処理速度は出せそう。2GHz級のCore 2 Duoとか、2コアのCore i系CPUと同等のパワーがあると見込めそう。
ただ、25℃くらいの部屋でも、dnetcを回したらものの数分で温度は50~55度程度まで上がり、そしてCPUクロックは800MHzに下がる。
1.2GHzなら80Mnodes/s程度出る見込みだったが、800MHzまで下がっているとなると、50Mnodes/sくらいまで落ちる。ここまで下がると、Atom 3735Gと差がなくなってしまう。
まあ、手に持って使うタブレットが、積極的にクロックを下げてでも発熱・消費電力を減らすというのは正しい。正しいが、それにしても下げる方向に積極的だなと。
GPU: RADEON R4
AMDだし、強力なグラフィックには期待したいところ。
標準状態では、グラフィックメモリーはメインメモリーから512MBを持って行っている。まあタブレットとしては余裕の4GBなので、多めに取ってるのも大きい問題はない。
distributed.netのOpenCLクライアントでベンチマークを取ってみたところ、A8-7600のRADEON R7と同等のGCNアーキテクチャっぽい。
A6 Micro-6500TのR4が、400MHz・2CU(128SP)で69Mkeys/s。
A8-7600のR7が、720MHz・6CU(384SP)で369Mkeys/s。クロックとCU数を揃えると、ほぼ同じ数字。
Atom Z3735GのHD Graphicsは、646MHz・4CUで8Mkeys/sしか出ないので、やはりここはAMD APUの強さは感じる。
Minecraft
Minecraft (Ver.1.10)は、バニラであれば描画設定を下げていくことで、なんとか普通に遊べるくらいにはなりそう。
しばらく動かして発熱し、CPUが800MHzに下がった状態でそういうプレイ感だったので、熱ダレするから5分しか遊べない、なんてことはない。ただ、広大な地下渓谷とか、大牧場とかを確認したわけでもないので、どこまで耐えるかはちょっとわからない。
ストレージ: BHT WR202D0064G
デバイスマネージャーによると、上記のeMMCドライブが使用されている。
CrystalDiskMarkによると、
- Seq Q32TI: Read 151.4MB/s, Write 67.79MB/s
- 4K Q32TI: Read 10.69MB/s, Write 11.76MB/s
- Seq: 150.6MB/s, Write 70.46MB/s
- 4K: 9.406MB/s, Write 10.72MB/s
と出た。eMMCってもっと遅いものだというイメージだったけれど、思ったよりベンチマークは出ている。SATAのSSDとはいわないまでも、なかなか頑張る。
正直、使っているとアプリの起動などはモタつく感じがある。eMMCの反応が鈍いような気はするのだけど、ベンチマークで見ると結構高速だし、どうなんだろう。
容量が64GBあるのは、素直に安心。使いやすい。16GBのWindowsタブレットを洒落で買ったら、TH1アップデートが容量不足で入らなくてえらく面倒だった。
SD/MicroSDスロット
ついでにSDカードスロットもチェック。
SDカードは、東芝EXCERIA SD-JU064Gを使用。UHSスピードクラス3、読み込み95MB/s、書き込み60MB/sのカード。
- Seq Q32TI: Read 21.55MB/s, Write 15.18MB/s
- 4K Q32TI: Read 9.301MB/s, Write 0.166MB/s
- Seq: 22.23MB/s, Write 18.24MB/s
- 4K: 8.762MB/s, Write 0.154MB/s
なんか値が異様に見えたので、東芝EXCERIA SD-FU008Gでも試してみた。UHSスピードクラス1、読み込み48MB/s、書き込み不明。
- Seq Q32TI: Read 19.58MB/s, Write 11.14MB/s
- 4K Q32TI: Read 6.792MB/s, Write 1.495MB/s
- Seq: 21.60MB/s, Write 18.24MB/s
- 4K: 6.247MB/s, Write 1.351MB/s
高速カードのほうがランダムライトがはるかに遅い、なんとも不思議な感じに。
なお、SDカードスロットは、カードが完全に筐体に収まるタイプではなく、少しはみだしてしまうので、常時挿しっぱなしのサブストレージにするには向かない。
MicroSDは、手元に高速タイプがなかったので、SanDisk Ultraの16GBで測定。カードスペックでは読み取り48MB/sだと思うが、書き込みは不明。
- Seq Q32TI: Read 31.17MB/s, Write 12.84MB/s
- 4K Q32TI: Read 2.164MB/s, Write 0.502MB/s
- Seq: 35.86MB/s, Write 12.58MB/s
- 4K: 2.035MB/s, Write 0.502MB/s
ということで、SD・MicroSDともに今日日の高速カードの性能を出せるスロットではない。ストレージとしてMicroSDを増設するなら、UHS-I対応のクラスであれば、容量だけ見ればよさそう。
デバイスマネージャーからデバイスを接続別表示にしてみると、SDカードリーダーは、PCIバス直下に「SDA 標準準拠 SDカードホストコントローラー」となっている。MicroSDカードリーダーは、USB接続で「Realtek USB 2.0 Card Reader」になっている。
MicroSDの速度は、USB2.0で頭打ちになってるっぽい。SDカードの方は、そもそもあまり速いコントローラーではない感じが。
なお、容量については公式スペックで200GBまで対応を謳っている。256GBを挿すとどうなるかわからないが、まあ当面は十分な対応容量だろう。
バッテリーライフ
Bluetoothキーボードを使って、会議のメモ取りをテキストで行う、といったことを何度かやってみた。
スペックシートで6~8時間動作とあるが、まあ、メモ取りのような極めて軽い仕事なら、本当に6時間以上持ちそうな感じだった。4時間近くやってバッテリー半分強ほど減るくらい。
スペックシートには、電池容量は32.6Wh (4800mAh)とあるのだけど、これだと電圧が6.8Vくらいで不自然に思う。リチウムイオンバッテリーの3.7Vから逆算すると、8800mAhくらいの数字になるので、こっちが正しくなかろうか。
3.7V-4800mAhの大型スマホ程度のバッテリーで、このWindowsタブレットを6時間稼働させられる気がしない。
ともあれ、一度の外出という時間スパンであれば、フォローしきれるバッテリーライフはある。USB充電ができないのが気になりはするが、まあこれだけ持つなら大丈夫かな。
バッテリーの劣化の速さはどうだろう。前のLavie Zは3年で半分以下まで容量が減ったけれど、リチウムポリマー電池なんてそんなもんって気がする……。もちろん今はほぼ劣化なし。
キーボードカバー
オフィシャル通販では別売り5000円相当だったよう。
カバーとしては結構しっかりしていて、磁石でスナップして閉じ、またスタンドにもなる。スタイラスペンホルダーもある。まあしっかりしているがゆえに、重量は本体が580g、カバーが500g程度で、装着すると1.1kg。ちと重い。
キーボードは物理スイッチがあるので、オフにすれば、裏返しにたたんだ状態でタブレットとして使うようなこともできる。
キーボード
キーボードには、リチウムイオンバッテリー内蔵。時々充電が必要になるが、なぜか充電端子はUSB 3.0のMicro B(小さい口が2つあるような感じのやつ)。
実際はこんなややこしいケーブル使わなくても、よくあるUSB 2.0のMicro Bケーブルが刺さるし充電できる。いかにも充電忘れそうなところなので、モバイルバッテリー使えるのは安心。
接続はBluetooth。USB有線接続は、してみたけど充電するだけでキーボードとして認識はしなかった。
無線接続の常で、スリープ復帰直後など少し待ち時間が生じるが、問題になるほど遅いってことはなかった。
雑な写真だけど、キー配列。
エンターキー1段なんて、私は単体キーボードなら絶対避けるのだけど、まあ付属品だから仕方ない。何度もエンターのつもりが¥が入ってるけれど。
右の方はかなり特殊配置。事情もあるのだろうが。日本語でよく使うかぎかっこ、MS-DOSプロンプトでよく使う¥、アンダーバー、それぞれ位置がおかしくて、タッチタイプで対応できない。
Deleteは右上に置いて欲しいし、Insertもコンビネーションにされるのはちょっと。NumLockなんかFnキーとのコンビネーションでどこかに捨てて欲しかった。カーソルキー近くにアプリケーションキーがあるのも邪魔で、よく触ってしまう。
それから、まさかの変換キー省略・Fn+右Altなんて操作に。私は変換キーにIME On/Offを配置する運用を、PC-9801時代から30年やってるから、これは辛いところだ。
……と配列に文句をつけまくりはしたけれど、まがりなりにも日本語キーボード。少なくとも日本語の入力に必要なキーは、どこかにある。英語キーボード使うよりはずっとよい。ノウハウあるメーカーならもっと煮詰めた配列にするとは思うが、流石にBungBungamesに日本語キーボードのノウハウは求められない。
キータッチもそう悪いものでもなく、価格帯としてはまずまずだろう。
タッチパッド
タッチパッドの品質は、よいとは言いづらい。
何より、単純に大きすぎるから、テキスト入力中に手が触れてタップされてしまうことがあったりする。
まあ、少ししか使わないなら、機能は果たす。よく使うなら、別にマウス持ったほうが幸せになるとは思う。
スタイラス
Windows 10のAnniversary Updateで、ペン周りの機能がかなり強化された。これはPhoton 2には実に好都合なアップデートに思える。
Windows InkやOneDriveでスタイラスを使っても、非力なタブレットのスペックでも、まずまず反応良く線が描ける。普通にさらっと動かす程度なら、弧が多角形に化けるなんてこともない。
感圧もちゃんと対応して、強く押し込むと線が太くなる。まあ、結構強めにいかないとあまり太くならないなー、とも思ったけれど、ここがあんまり鋭敏すぎても太さぐちゃぐちゃになりそうではある。
スタイラスのサイドには2ボタン(見た目ひとつだけど両端にそれぞれ別ボタンの判定がある)で、ペンと消しゴムも持ち替え無しで使える。マウスがわりに使うにも便利。
これはかなりいい。導電繊維の太いスタイラスなどよりも、遥かに正確で使い心地もいい。
絵心があれば、何かひとつ描いて見せてみるのだけど、あいにくそれはできない。
重いペイントソフトを使えるPCスペックではないように思うので、絵描きさんが液晶ペンタブの代わりに使うというのは難しい気はする。どうなんだろう。
なお、電池は単6電池が必要になる。どうしようかと思ったらヨドバシカメラに置いてたのと、あとは6LR41の9V電池をバラすという手があるらしい。
使用感など
スペックでは、「タブレットにしては強力」というクラスのもので、実際の使用感もそれくらい。
ただ、ちょっと気になったのは、不思議とアプリケーションが立ち上がるのが遅い気がする。アイコンをタップしたつもりが反応がなく、あれ、と思ってもう一度やったら二重起動、なんてことをよくやってしまう。
OfficeやらPhotoshopやらであれば遅いのはあたりまえなのだけど、テキストエディターくらいでも遅く感じる。メモリーが4GBあって、ベンチマークはそう遅くないはずのeMMCストレージで、たかがエディターに。
まあ、起動してしまえば別に遅い感じはないので、慣れればいいことではあるけれど。
タブレットとキーボードカバーを合わせて1kgちょい。小さめだから持ち重りする感じもあって、もうすこし軽くなってほしくもある。
その分、防御力高そうなカバーなので、鞄の中に入れていて壊れてしまいそうな不安は小さい。
スタンドの角度は固定で、私は背が高いので少し立ち気味に感じる。液晶はIPSなので、少々角度が外れても見え具合に問題はなし。
しかし、奥行きを結構取ってしまう。狭苦しい安カフェの席なんかでは苦しい場合もある。重心も高いので、キーボードが手前に机からはみ出し気味だと、パームレストに手をおいたら持ち上がりかけたりも。
ひざ上使用は、きちっと膝を閉じていれば大丈夫。
キーボードカバーを外しての単体運用は、うーん、どうだろう。
Windows 10自体がまだまだ、タッチだけで運用するにはこなれてない。タッチ運用だとどうにもAndroidの方が強い面が多い。
現時点ではキーボード付きノートPCとしてしか使う気がない。ゆくゆくこなれてくれば、タブレットとして軽快に持ち出すシーンも出てくるかもしれない。
ここはハードウェアのせいではない。
総じて、これ3万円弱なら安いな。お買い得だった。